カンボジア道中記3

第2話「秘密の計画」

<2015年9月7日(月)10:00 プノンペン市内のホテルに到着>

プノンペン国際空港から車で移動すること約1時間。


一行はプノンペン中心地にほど近いホテルへ到着した。

 

まっすー

「着いた〜、あぁここだ!こんな感じだったな」



 

ほっしー

「あぁ、昨年泊まったのもここだったんだよね? 窓が鏡でハメ殺しの…」



 

まっすー

「そうそう、クーラーから水が出るとこ(笑)」

(※詳しくはカンボジア道中記1を参照)

各自、チェックインの手続きをする。


受付カウンター

「○✕△□☆◇?」


ほっしー

「え?なんだって??」


カリタ

「バウチャーですね。予約確認の書類あるかって」


ほっしー

「あぁ、なるほど、さすが!」


無事チェックイン完了。

それぞれチェックインを済ませる
それぞれチェックインを済ませる

KOSMIC

「一旦、荷物整理していいかな?」

 

まっすー

「じゃあ、皆ちょっと休んで、30分後に集合して昼飯行こう」

 

各自部屋に入り、荷物の整理やひと休みをして再び集合。

ボスと同行している知人の方たちと、その他のメンバーの2手に別れて食事などをとりながらしばしの自由時間。それぞれプノンペンの街へと出る。

 

たやまん

「飯はイオンモールがいいんじゃない?」

 

まっすー

「うん、それが一番安心だと思う」

 

ほっしー

「イオンモールがあるんだ!?」

 

「イオンモール プノンペン」は、2014年6月にオープンしたカンボジア最大規模のショッピングセンターで、日本からも49店舗の飲食店や専門ショップが出店している。

シネマコンプレックス(複合映画館)やスケートリンクまである。


まっすー

「とりあえずトゥクトゥクつかまえよう」


カリタ

「あそこにいますね」


1台のトゥクトゥクに6人で乗り込む。


たやまん

「まっすー、ケツ入んないんじゃない」


まっすー

「いや、なんとか! あ、ミサエごめん…」


ミサエ

「うん、、ちょっと前出るわ(笑)」


眩しい光と風を受けて、活気に溢れるプノンペンの街をトゥクトゥクが行く―。

このいたってシンプルな乗り物はとても不思議で、砂埃の中を走っても、排気ガスが臭くとも、いざ走り始めるととても爽快で、旅の高揚感を一気に高めてくれる。


KOSMIC

「なんか久しぶり!」


ほっしー

「いいね〜!やっぱこれだね」


皆、自然と笑みがこぼれる。

本当は4人乗り?6人で賑々しくトゥクトゥクに揺られる(左からまっすー、ミサエ、ほっしー)
本当は4人乗り?6人で賑々しくトゥクトゥクに揺られる(左からまっすー、ミサエ、ほっしー)
やっぱりトゥクトゥクは気持ちいい!(左からたやまん、カリタ、KOSMIC)
やっぱりトゥクトゥクは気持ちいい!(左からたやまん、カリタ、KOSMIC)

走ること10分ほどで、「イオンモール プノンペン」に到着。


規模こそかなり大きいものの、それは見慣れた日本の建物であった。



 

ほっしー

「ホントに“イオン”だ(笑)なんか不思議」



 

ミサエ


「広いねえ。ここだけ日本みたい」



 

中に入るとテナントもほぼ日本と同じで、店内の雰囲気も驚くほど“日本”である。


スタッフはカンボジア人だがその人たちまで日本人っぽく見える。
ただ、規模はかなりのもので全部を見て回るのは一苦労するだろう。



 

とりあえずレストラン街へと上がっていく。ここも日本でお馴染みのショップが並ぶ。


我々は麺類が食べられる店へと入った。

たやまん

「スーラータンにしようかな」

 

ミサエ

「私、ビールを…」

 

まっすー

「姐さん、またビール!? 泥酔なしだよ(笑)」



 

ミサエ

「いや、、やっとアンコールビール飲めるからね」



 

ほっしー

「みんな麺だね。前回だったら汁物なんて絶対頼まなかったでしょ」



 

KOSMIC


「たしかに」



 

まっすー

「ここは大丈夫だと思うよ。っていうかもうあんまり気にしてない(笑)」



 

ほどなくして、料理が運ばれる。



 

ほっしー

「おぉ、春巻きも美味しそう!」



 

たやまん

「ん〜、美味い。…っでもスーラータンではないな」

 

カリタ

「たしかに美味いけど、スーラータンではないですね」

 

KOSMIC

「美味いね。スーラータンではないけど」

 

まっすー

「あぁ美味いね!たしかにスーラータンではないな」

 

なぜか、たやまんの丼を一周する。

美味いけどスーラータンではなかったらしい(笑)

日本にいるかのような雰囲気
日本にいるかのような雰囲気
料理はどれも美味しかった
料理はどれも美味しかった
でも、スーラータンではなかったらしい(笑)
でも、スーラータンではなかったらしい(笑)
やっぱこれよ(ミサエ)
やっぱこれよ(ミサエ)

我々が食事する横で、地元の高校生らしき男女4人のグループが楽しそうにランチをしている。


 

ミサエ

「なんかああいうの見ると日本の高校生と変わらないね」

 

ほっしー

「たしかに。放課後ファミレスなんかで過ごしてるのと変わらないね。でもここの食事の料金もそこそこ取られるよね」

 

KOSMIC

「裕福な家の子たちなのかね?」



 

ミサエ

「そうなのかもね、なんか前回バンティアイチャックレイ中学校の子たちとか物乞いの子とか見てきたからちょっと複雑…」

 

よく店内を見ると、おしゃれに飾った学生たちのグループの姿が何組かあった。



カンボジアの貧富の差はかなり極端で、比較的裕福な層が多いプノンペンの街でもゴミを漁る人たちの横をレクサスが走り抜ける、そんな光景がこの街の日常であり、カンボジアの発展のなかでそれは日ごとに大きくなっているように感じられる。

食事を終えた一行は旅の疲れを癒やすため、マッサージ店へと足を運ぶ。

プノンペンやシェムリアップなど観光客が多い街にはマッサージ店が多くある。
皆でトゥクトゥクの運転手オススメの店に入る。


まっすー

「やっぱ、とりあえずマッサージでしょ」


ミサエ

「だね」


少し待たされて、揃って部屋へと案内される。

薄暗い廊下を通り、とっても急な階段を上がる。


ミサエ

「あ!田山さん、階段が急ですよ♥」

 


たやまん

「やめて…」


前回、高所恐怖症ぶりを披露したたやまんを早速イジるミサエであった。



全員でズラッと並んで横になる。
それぞれの所に担当者が座り、淡々とマッサージが始まる。

まっすー

「あれ? なんかオレのとこ誰も来ないんだけど…」




たやまん

「デカすぎて、拒否されたんじゃない (・∀・)」


数分遅れて、ようやくまっすーの担当者が登場。


まっすー

「ねぇねぇ〜、オレだけ遅くない??」


日本語が伝わるわけもなく、軽くスルーされてマッサージが始まる。




たやまん

「ちょっとぉ〜、デカくない? 何でワタシの担当だけこんなデカいのよ!追加料金とらないとヤッてられないワ〜」




まっすー

「え〜っと、、勝手に代弁するのやめてもらえる?」


…その後、お疲れの一行は、マッサージ終了までグーグーとイビキをかくのであった。

皆で横になる。なぜかお腹全開のまっすー(笑)
皆で横になる。なぜかお腹全開のまっすー(笑)

---------------------------

 

それぞれに時間を過ごしたボスたちとその他のメンバーは夕刻前に合流し、仕事で残ったほっしー以外の全員で、キリング・フィールドへと向かった。
キリング・フィールドはカンボジア国内に何箇所かある、S21(トゥールスレン)と並ぶポル・ポト時代の虐殺の舞台のひとつであり、多くの犠牲者が埋められた場所である。

帰ってきた皆の顔は一様に暗く、重苦しい雰囲気だった。

 

ほっしー

「どうだった?」

 

ミサエ

「いや、、辛かった…。穴もそのままで、遺骨はまだ全部掘り起こされてないみたいで、着ていた服なんかも見えてて…」

 



KOSMIC

「実際に子どもが打ち付けられた木がそのまま残っててね、ガイド音声が色々解説してくれるんだけど、何とも言えない感じで…」

 

まっすー

「ある意味トゥールスレンよりもきつかったね。静かでキレイな場所なだけにより物語ってるというか」

 

我々は、この国に関わり、今日の復興や発展を見るとき、いつもこの甚大な犠牲を払った悲劇を忘れてはいけないと思わされる。風化するにはあまりに最近の出来事であり、いくら時間が経っても風化してはいけない悪夢なのだと。

 

プノンペンにあるキリング・フィールド とても静かで一見のどかな公園のように見える

---------------------------

 

夜になり、関係者を交えて、明日の新校舎贈呈式の打ち合わせを兼ねた食事会が催された。

 

昨年の最初の渡航から、ずっと現地のコーディネートをしてくれている、株式会社淺沼組の松林さんをはじめ、JHP学校をつくる会のプノンペン事務所の圓山(まるやま)さん、そして前回も旅をともにしてくれたプノンペン事務所所長の木村晋也さんなど、全員揃っての会食である。

圓山

「それでは、明日の贈呈式よろしくお願いします。まずは乾杯を」



 

木村

「では、お配りしたプログラムの内容で明日の贈呈式を進めさせていただきたいと思います」

 

皆、真剣にプログラムに目を通す。

 

木村

「そしてこの次に、狩野様よりご挨拶をいただきます」

 

ボス

「何話そう、増田やってよ」

 

まっすー

「いやいや、、ここは狩野さんじゃないと」

 

 

贈呈式は僧侶による読経からはじまり、贈呈者であるボスや政府から教育省の挨拶、生徒代表の言葉などがあり、テープカットなども行われる。

その後チャリティーロックフェスの成果である贈呈品を贈るべくKOSMIC、ミサエが壇上に立ち、KOSMICによる新曲の披露、生徒達への贈呈品の手渡しという流れである。
その他にもいくつかのイベントがあり、時間内で終わらせるためには予定されているものを手際よく進めていかなければならない。

関係者全員揃って、まずは乾杯
関係者全員揃って、まずは乾杯
贈呈式のプログラムが配られる
贈呈式のプログラムが配られる
詳しい打合せが進む(中央:JHP木村氏、奥:JHP 圓山氏)
詳しい打合せが進む(中央:JHP木村氏、奥:JHP 圓山氏)
ボスも真剣な表情で書類に目を通す(中央:ボス  奥:松林氏))
ボスも真剣な表情で書類に目を通す(中央:ボス 奥:松林氏))

おおよその打ち合わせが済み、美味しい料理が次々と運ばれてくる。

お酒も入り、和やかな雰囲気に。


ボス

「増田!来たぞステーキ!」


まっすー

「あざーっす!」


ほっしー

「これが、あの1キロのステーキ。たしかにすごい(笑)」


カリタ

「これタレがむちゃくちゃ美味しい!」


ボス

「増田!全部食っていいぞ!」


まっすー

「あ、あざーっす!(たやまんどこ行った…!)」

 

たやまん(バカっ!こっち見るな…)


しっかり端っこに座って、お利口にしているたやまんであった。

名物(?)の1キロのステーキ。大きいだけじゃなく味も格別!
名物(?)の1キロのステーキ。大きいだけじゃなく味も格別!
端っこでエンジョイするたやまん。見つめるまっすー(笑)
端っこでエンジョイするたやまん。見つめるまっすー(笑)

ここで、ほっしーがボスにずっと言いたかったことを話しはじめた。

 

ほっしー

「やくそくプロジェクトは、狩野さんと娘さんとの約束が発端になってるわけですけど、当時娘さんは本当まだ小さくて、その子とテレビを見ながら約束したことを10年も経って守れるかなと思うんですよ。たぶん普通の人はそんなこともあったかなと忘れてしまうだろうなって。狩野さんはそれを本当にやってしまった。これってすごいことだなと思うんです」

 

ボス

「いや、オレはさ、全然すごいことなんてやってないのホント! ただのワンマン社長の道楽でさ。

だいたい全部こいつら(たやまん、まっすー)がやったことで、オレは号令かけただけだから」

 

まっすー

「いやそんなことないですよ。狩野さんの想いがなかったらこうはならなかったし、狩野さん見て、私も娘と何か約束しようかと思いましたもん」

ボス

「お、増田!2校目も頼むぞ!どんどん進めちゃえよ!」

 

まっすー

「え!?あ、はい」

 

ほっしー

「本当に学校建設が実現して、娘さんはどんな反応でしたか?」

 

ボス

「ん〜、「そうなんだぁ」みたいな」

 

ほっしー

「約束したこと忘れてたわけではないですよね?」

 

ボス

「覚えてはいるみたいだけどね」

「2校目も頼むぞ!」とボスの声
「2校目も頼むぞ!」とボスの声

そんなやりとりしている間、バルコニーではある“密談”が行われていた―。


木村

「では、挨拶が終わったあとに上がって来てください。会場には何を読むか言いますが、狩野さんには通訳しないように言いますから」


ミサエ

「緊張して吐きそう、、」


KOSMIC

「大丈夫!ミサエならできる」


たやまん

「頼みましたよ」

――出発前月の8月某日、「やくそく」プロジェクト定例会議にて

ほっしー

「娘さん、贈呈式は来られないんですよね」


まっすー

「そうなの。受験勉強もあるし、9月は学校も始まってるから難しいみたい」


ほっしー

「10年越しの約束の一つのクライマックスですから、何か記憶に残るものにしたいですよね」


たやまん

「あ、、娘さんに手紙書いてもらうか。狩野さんに」


ほっしー

「!?それだ! 田山さんナイスアイデア! 娘さん来られないし絶対いいですよ!泣いちゃうわ」


まっすー

「ヤバい、オレが泣いちゃうソレ」


たやまん

「ただ、書いてくれればだけどね」


まっすー

「ここは上手く説明して、何とか書いてもらいましょう!」


――

たやまんがナイスアイデアをひらめく
たやまんがナイスアイデアをひらめく

密談が行われているバルコニーに出てきた、まっすーとほっしー。

 

KOSMIC

「木村さんが流れをもう考えてくれてた」

 

ほっしー

「あぁ良かった!手紙書いてくれてよかったね。内容も良かったしね」

 

まっすー

「もうオレさ、読んだだけで号泣よ…。ミサエ頼むよ!」

 

ミサエ

「ホント読むの私でいいのかな、、イメージ壊しそうで。JHPの女性スタッフとかでも、、」


 

まっすー

「いや!ここはミサエに読んでほしいんだ」

 

ミサエ

「…わかった、やります!明日泣かすから」

 

まっすー

「泣かしたいねぇ〜」

 

たやまん

「あぁ〜、後でオレ絶対怒られるわ。。考えたヤツ誰だ!って(泣)」

 

---------------------------

 

いよいよ翌日に迫った、バンティアイチャックレイ中学校の贈呈式。

KOSMIC、ミサエをはじめ、各自が重要な役割を担っている。


完成した校舎はどんな姿なのか、3ヶ月ぶりに会う生徒たちはどんな風に出迎えてくれるだろう。


そして、娘さんからの手紙というボスへのビッグサプライズは成功するのか?

全員が何とも言えない緊張感を感じながら、プノンペンの夜は更けていくのであった。

 

 

<第2話 了>

 

 

「今日のクメール語会話(2)」

 

クニョーム モーック ピー スロック チョーポン」= 私は日本から来ました

 

 

※スロック(国)、チョーポン(日本)、モーックは(来る)、ピーは(〜から)

 

<次回予告>

いよいよ、贈呈式の日を迎えた。

到着したバンティアイチャックレイ中学校では式典の舞台が整えられていた。

本番を前に緊張を隠せないメンバー。
果たして、ボスへのサプライズは成功するのか?
ボスは子ども達に何を語るのか。

そして、KOSMICが新曲を携えてギターを片手に再び子ども達の前に立つ—。

 

 

カンボジア道中記3  第3話をお楽しみに。