トラッピャンドン小学校 新校舎建設
5、6年生になると、
5km遠方の他の小学校へ
交通手段がなくドロップアウトも…
世界的な新型コロナウィルスの蔓延を受け、活動の一時停止を余儀なくされていた「やくそく」プロジェクトが約2年半ぶりに動き出しました。
6校目の支援先に決定したのは、首都プノンペンから車で約166km、ベトナム国境に近い南東部に位置するトゥボーンクモム郡にあるトラッピャンドン村。
この村にある「トラッピャンドン小学校」は校舎が1つあるものの、教室2つに対して児童の数は約300人ほどおり、教室数が圧倒的に不足しているため、ここでは1年生から4年生までが午前・午後に分かれ2クラスずつ授業を行っています。
2つの教室は満席状態で、文房具も常に不足しているといいます。
一番問題なのは、教室が足りないために5年生、6年生は5km離れた別の小学校まで通わなければならないということ。
自転車など交通手段を持たない子供はここで4年生の授業をもう一度受けるか、最悪はドロップアウト(中途退学)してしまいます。
学習意欲が高い子供が多く、中学校への進学を望む子供も少なくありません。
「6年間学校に通いたい」その思いを叶えるために、約2年半ぶりの「やくそく」プロジェクトは6校目の支援先として、ここ「トラッピャンドン小学校」の新校舎建設に決定しました。
学校名 | トラッピャンドン小学校 |
建設地 | トゥボーンクモム州トゥボーンクモム郡 スロロブコミューン トラッピャンドン村 |
工事期間 | 2022年9月〜2022年12月 |
竣 工 | 2023年1月19日 |
贈呈式 | 2023年2月13日 |
建設前の状況 |
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支援内容 |
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<現地インタビュー>
■生徒
小学4年生、10歳の男女1人ずつに学校生活を送るうえで困っていること、中学校に進学したいかを聞いたところ、トイレが無く、そのために家に帰らないといけなく困っていると教えてくれた。それに加え文房具が足りないことを教えてくれた。中学校に進学して沢山勉強したいとのこと。
■トゥボーンクモム群 教育長長官
現在、カンボジアで一番深刻な問題を聞くと校舎数の不足だという。それに対して我々が出来ることを聞くと今回のように学校を寄付することと答えてくれた。2番目は教員の不足でこの群では300人の教師が不足していること。この問題は国の教育委員会がどうにかするまで待つしかないと答えてくれた。
校舎の寄付以外で助かる支援を聞いたところ、ワークショップなどを通した衛生面の教育とのこと。衛生面の知識がなく下痢になってしまい学校を休んでしまう生徒が数多くいる。手洗いの大切さなどを説くことでそのような生徒の数を減らすことができる。カンボジアのでは衛生面の知識が足りなく教えることができない。学校寄付などの形に残る支援が目立つ中こうした内面の支援も本当に助かるという。
■学校長
生徒が文房具の数が足りないと言っていたので実際にどのくらい足りていないか聞いてみたところ、40パーセントの文房具が足りていなく、特にノートが足りないとのこと。ノートが一冊しかないので数多くの教科を一冊のノートで勉強しているのが現状だという。それに加えブランコや滑り台のような遊具が欲しいと言っていた。小学校に入るまでの子どもの遊び場がなく、教育を受ける前準備をさせてあげたい。実際に小さな子がとても退屈そうであった。
2022年9月10日、最終協議会(学校建設のための村民説明会)にマーケットトラスト代表の狩野富をはじめ、「やくそく」プロジェクトメンバーが出席しました。
久々のカンボジアのジリジリする日差しに懐かしさを感じながら、プノンペンより車で約4時間かけて現地に到着。
村民の皆さんと郡の教育長長官が出迎えてくれました。
恐る恐る、遠巻きに我々の到着を見つめる子どもたち(笑)。シャイな子どもが多いようです。
そして今回もJHP学校をつくる会の皆さんの進行のもと、ここに新校舎が建つこと、校舎をキレイに使うことの大切さなどを伝えました。
最後に恒例のお菓子配り!恥ずかしがっていた子どもたちも一気に元気モード(笑)
たくさんのお菓子もらって嬉しそうな笑顔を見せてくれました。
「やくそく」プロジェクト6校目となる「トラッピャンドン小学校」の新校舎が無事に完成しました!
2023年2月13日、代表 狩野 富をはじめ、プロジェクトメンバーとJHP 学校をつくる会で現地を訪れ、校舎の完成贈呈式が行われました。
贈呈式の詳しい模様は下記よりご覧ください。
新型コロナウイルスが世界を大混乱に陥れてから3年が経ちました。当初は海外はおろか国内の移動もままならないような状況になるとは思いもよりませんでした。
コロナ前、最後にカンボジアを訪れたのは2020年1月。バラン小学校の贈呈式でした。当然、その春から次のプロジェクトに向けて動き出すはずでした。
2014年のスタートから約9年間も走り続けてきた「やくそく」プロジェクト。これまでに建ててきたものは、今回の6校目も含めて校舎 6棟 18教室、トイレ6棟 20室、水タンク5基、手洗い場1棟におよびます。
「もう海外行けないし、以前とは世界も変わっちゃったし、カンボジアも発展してきてるし、もう十分じゃない?」
そんな声を聞くこともありました。
「もしかしたら、このまま終わってしまうのかな…」
あまりに長引く状況に、正直そんな風に思ったこともありました。
でも、プロジェクトメンバー誰しもが心の底では「このままじゃ終われない、こんな終わり方嫌だ」と思っていたと思います。
ただ、ボスこと狩野 富(マーケットトラスト代表)は、終わらせるつもりなど微塵もなかったようで、学校が建てられない間も寄付を続けていたのです。
「出会っちゃったんだから、知っちゃったんだからやるしかない」
以前にも言っていた言葉です。
かくして、我々のプロジェクトは2年半の中断を経て、2022年9月に再始動しました。メンバー誰一人として欠けることなく。
そして、3年ぶり6校目の「トラッピャンドン小学校」の新校舎がここに建ち上がったのです。
嬉しさもあり、またここから始まるんだなという緊張感にも似た思いもあり、様々な心境で完成贈呈式を迎えました。
新校舎や手洗い場を前にした子どもたちや村民の嬉しそうな顔、また我々外国人を興味津々に見つめるその表情に、我々は何のためにここに来ているのか、なぜ8年もこの活動を続けているのか改めて初心を問われているような気がしました。
「出会っちゃったんだから、知っちゃったんだからやるしかない」
それに尽きるのです。楽しみのために来るには過酷すぎる旅なのだから。
カンボジアを劇的に変えられなくても、自己満足と言われようとも出会った人のためにやるだけなのです。この一瞬の笑顔のために。
さて、トラッピャンドン小学校に新校舎ができたおかげで、5年生以降遠方の学校へ行かなければならなかった高学年の生徒たちやそのためにドロップアウトしてしまった子どもたちが学校へ帰ってきました。ずっとこの学校で学び続けられるようになったのです。生徒たちにとってはこれは本当に大きなことだと思います。
あとは彼らが夢を持って勉強して自らの未来を切り開いてくれるのを祈るばかりです。
この3年でカンボジアはさらに発展していました。
舗装された道路は伸び、一部電車も開通。首都プノンペンは近隣国に負けず劣らずの近代都市になりつつあります。
今回特に思ったのがスマホの普及率。多くの人がスマホを持ち、我々の写真を撮っていました。中には一緒に自撮りをしようと言ってくる人も(笑)。カンボジアの人にスマホで写真を撮られる日が来るとは。
しかし、一方で生活インフラの普及率はまだまだ。この村にも相変わらず水道はなく、井戸で水を汲み上げ、一歩裏手に回ると目の前には果てしない荒野が広がっています。
建物としての学校はだいぶ足りてきているようです。学校自体がなくて学べないという状況は少なくなっています。
しかし、教員の数は依然として不足しています。こればかりは急に増やせるものでもなく、これからの世代に期待するしかありません。
このように、まだまだ歪な状態にあるのがカンボジアの現状です。だからこそまだまだ我々の活動の必要性もあるのかなと思います。
前述のとおり、「やくそく」プロジェクトがカンボジアや世界を救うわけではありません。
ただ、続けていくことに意義があり、そして続いていくことに意味があるのかなと思います。
難しことを書きましたが、難しいことは考えず(笑)これからもボスを先頭に皆で走り続けたいと思います。
再始動した「やくそく」プロジェクトを心のどこかに覚えていてくれると嬉しいです。
<撮影・文責>
「やくそく」プロジェクト事務局
星野 大起