カンボジアの現状を知る
「カンボジア王国」インドシナ半島に位置する国です。公用語はクメール語(カンボジア語)、国民の90%は上座部仏教徒を信奉していて、多くの寺院があります。
カンボジアは、フランスの植民地支配や、大国の戦争に巻き込まれ翻弄されてきました。
そして、もっともこの国に暗い影を落としているものは、1975年から約4年間、ポル・ポト率いるクメール・ルージュ(カンボジア共産党)によって行われた、過激な共産化と大量虐殺の歴史です。
ポル・ポトは、首都周辺に住む人たちをすべて農村部に強制移住させ、完全国民農業従事を強制、農業従事に素直に従わない可能性の高い知識人、富裕層、教師、技術者、医者、僧侶の抹殺をはじめました。さらには、その家族、読み書きができる、メガネをかけているなど本来の範囲を超えた目的を失った虐殺が行われました。
学校は反逆者を捕らえ拷問する収容所となり、教育は完全に封じ込められましたその結果、実に人口の1/3が亡くなり、その数180万〜250万人とも言われていますが、真の実態は現在でも解明されていません。
ポル・ポト政権の崩壊から35年以上が経ちました。
人口分布を見ると、ポル・ポト政権下での大量虐殺の時代を生きた年齢層が極端に少なくなっていて、いびつなピラミッド状態になっています。
社会を牽引する重要な年代の人たちを失ってしまった結果、カンボジアの復興や発展は大きく立ち遅れることとなってしまいました。
参考:JHP2012年 活動報告より
極端な貧富の差
現在カンボジアは、 海外支援を受けながら徐々に復興の道を歩んでいます。特に首都であるプノンペンでは大きなビルが立ち並び、急激な発展を遂げています。
その発展の裏で、都市と農村部の格差が極端なまでに広がっています。
都市部は、水道設備や下水処理、電気など、生活に必要な社会インフラが整備されてきていますが、農村部ではインフラの整備はほぼ皆無で、未だに溜め池の水を使用し、衛生面も劣悪な状態にさらされています。
毎日ゴミ山を漁り、その日の生活の糧を得なければならない状況にある子どもたちもまだ多くいます。
海外からの様々な支援もあり、小学校の数、就学率は増えてきました。
ただ、家庭の事情や同地域に中学校、高校がないため、学年を増すごとに就学率は下がっていき、小学校の入学率は約95%あるものの、小学校→中学校への進学率は約40%、中1→中3まで進級がその中の40%、中学→高校へは20%、大学へ進学する率はほんの数パーセントにすぎません。(2015年1月現在)
小中高の在籍者数
■ 小学校、■ 中学校、■ 高校
参考:JHP2012年 活動報告より
■ 小学校、■ 中学校
設備の問題
子どもたちの就学率低い原因には、学校設備が劣悪であることも挙げられます。
老朽化した校舎は倒壊の危険性のあるものも少なくなく、親が通わせたくないという現状もあります。
コンクリートの校舎も増えてきましたが、トタンを貼り合わせた校舎、竹でできた校舎、トイレのない学校などもあり、古くなったり壊れても改修することができずに放置されそのまま使用されていたり、多くの学校が何らかの設備的な問題を抱えています。
校舎のつくり
■コンクリート、■木造、■竹やバナナなど
問題を抱える校舎数
■ 小学校、■ 中学校、■ 高校
参考:JHP2012年 活動報告より
教員の問題
前述のように、知識人と教員の多くが虐殺されたため、この国には熟練の教員がほとんどいません。教員たちは、手元にある教科書を頼りに授業をするため、基礎がなく、子どもたちに本当の学習を授けることが難しい状態です。特に音楽や美術は教えることができる教員はほぼおらず、日本をはじめ、多くの国のNPO団体などが、教員の育成を急ピッチで進めています。
「教育は国家百年の計」というように、教育は目に見える物ではなく、教員の育成から始めることを考えると、結果が出るまでに非常に時間がかかるので、10年、20年と継続的な支援が必要です。